母との過ごし方がわからない。
私は新しい仕事のために、もうすぐ引っ越す。
あと数日したら、次の年末まで母と会えなくなる。
母が非番なので一緒にとんかつを食べにいった。
道中、車で一緒にいても、大して話すことはない。
私は基本無言。時おり母が質問してくる。
けれど、10回に7回は話がうまくいかない。
必要以上に大きい声にも
無神経な言葉にもイライラしてしまう。
母の踏む車のブレーキが毎回きつい。近眼なせいだ。
私は頭が痛くなり、気持ちが悪くなる。
食べ終わり、本当は一緒に買い物にいく予定だったが
気分が悪くなってやめた。
母はパチンコへ行った。私はひとりで横になることにした。
私は母との時間の過ごし方がわからない。
母は私に何かを買ってあげたいと言ってくれるが
私は「大丈夫」と言う。母は残念そうな顔をする。
帰省するたびに「あんたにこれあげるわ」と
安くてダサい服を渡されそうになる。私は「いい」と言う。
母は身なりに無頓着で、1000円〜3000円ぐらいの服しか着ない。
よそ行きの服なんて、お葬式のときぐらい。
いつもジャージみたいな服だ。
私は昔から、家にお金がないことを知っていたから
「欲しい」とねだることを自然としなくなった。
母は「あげる」と言い、私は「大丈夫」と言う。
母は自分のためにお金を使わない。
私は母自身のために使って欲しいと思い、断る。
私がひとのために尽くす性分なのは
きっと母からの遺伝だと思う。
ほとんどの場合、母と一緒にいても苦痛だ。
楽しくない。
それでも、母をどうしても嫌いにはなれない自分も確かにいる。
ハリネズミジレンマのような呪い。
私は自分の不器用さに辟易する。
そんな不器用な家族のかたち。